全員死刑

映画

こんにちは!ヘドロです。

最近、見た好きな映画を紹介していきます。

今回紹介する映画は小林 勇貴監督

2017年公開作品【全員死刑】です。

【概要】

実際に起きた事件である『大牟田4人殺害事件』

その犯人による獄中手記『我が一家全員死刑』を映画化したお話です。

小林監督は過去に本人の出身でもある静岡県富士宮市で

十代の若者が引き起こした事件をベース『孤高の遠吠え』という映画を制作し、

キャストには俳優ではなく富士宮市に本当に住んでる不良を大挙出演させ、問題作として話題になりました。

(彼らの元気な姿を現在もTwitter上で見ることが出来ます。)

小さな火種がどんどん膨らんで収拾がつかなくなっていくリアルさ

独特な音楽の使い方、画面のタッチなど

『孤高の遠吠え』で垣間見えた監督の資質は今作でも遺憾なく発揮されています。

【内容】

本作の内容は

主人公である首塚家次男のタカノリが借金を抱えた家族を救うため、

すぐ近所に住む金貸し業の資産家・吉田一家を襲撃し、財産を奪う計画を実行する。

というお話です。

全体的にかなり黒いブラックコメディで場当たり的な犯行の数々は

現実にこういう人たちがいるかも知れないというリアルな恐ろしさと

笑ってしまうほど身も蓋もない殺人の『動機』と『計画』のバカバカしさを映像化しています。

具体的には、殺人を犯している最中にジュースを飲んだり、

『そこのタバコとってくんない?』と言い出すシーンなど

人を殺すことや殺した後のことを『そんなに深く考えてない』ことが見受けられます。

更によく聞くとあまり会話になっていない会話など、延々と続く言動のちぐはぐさも魅力となっています。

コンクリートブロックを死体に括り付けて川に遺棄する場面では

弟『これ、時間たったら浮かんでこないかな…』

兄『大丈夫だよ、俺がいるから』←(?)

といった会話など

劇中はこういった感じで

観客側がツッコむしかないような変な状況が延々と続きます。

ヤクザである一家の父親が『心臓を一発で狙え』と息子に銃を手渡したにも関わらず

指示された息子は

何故か関係のない人を『試し撃ち』として撃ち抜いてしまい(しかも頭を)、余計な犠牲者を増やしたあげく、

(素人にいきなり心臓を一発で撃てと命じる方も命じる方ですが)

更に始末の悪いことに銃を発射したのが車内であったため

最終的に血や脳漿で汚れた車を洗浄するも面倒くさくなり『車ごと川に捨てるか。』

という場面もありました。(翌日、すぐに車ごと警察に発見されました。)

他にも、1回で息の根を止めきれず二度手間、三度手間と掛かってしまい

どんどん事態が面倒くさくなって行く様が散見され、

その手際の悪さに何故か親近感すら覚えてしまいます。

一家のお母さんが『殺すんならせっかくだからアイツも殺して』と

どさくさに紛れて個人的に私怨のあるホスト狂いの女の殺害を家族に依頼し

睡眠薬で眠らせた際に

『よっしゃあああああ!』と凄く気持ちのいい雄叫びとガッツポーズを見せるシーンなど

よく分からない爽快感を覚える場面も多々あります。

あまりにも『何でそうなるの?』『嘘だろ?』と思う様な出来事の連続なので観ている間は意識していませんが

恐ろしいことに本作は元となった事件における犯人の手記をほとんど忠実に映像化しています。

場面転換の際に時折、主人公のモノローグとして

『二度殺したショウジが生きていた!命とは簡単なような難しい』

『女を守るためにこの件を受けた!』

『俺が身代わりに出頭することにしたのだ!』など

芝居がかった雰囲気の異様な字幕が挿入されます。

これは手記の文章をそのまま引用しているそうです。 

実際、全ての事件の実行犯である次男タカノリは一本気な男で

彼なりの家族愛に基づいて行動しており、

彼の中では自叙伝の1ページとして

『実録ヤクザ』シリーズにおける『山口組外伝 九州侵攻作戦』の夜桜銀次みたいな

弱きを守る命知らずの鉄砲玉のつもりになっています。

(実際にやっていることは何もかも違いますが)

自分の事というのは中々自分では見えにくいので

本意を履き違えたまま

『覚悟を決める』や『~の為に』の様な美辞麗句に取り憑かれていると

知らず知らずのうちに突飛な行動に出てしまうかもしれないので

パラダイムの眼鏡を1つだけ掛け続けるのは危険ですね。気を付けましょう。

本人たちはいたって真面目に犯行を行っており

アドレナリンや不安と興奮で見えている景色は人と全然違っているので

どんなに杜撰な計画でも勢いでやってしまう事がよく分かります。

マフィア映画の巨匠とも言われる『マーティン・スコセッシ』監督は

マフィアだらけのシチリアで幼少期を過ごしました。

小林 勇貴監督も不良だらけの富士宮市で過ごしており、

そういった背景も作品のリアルさに影響しているかもしれません。

次回作にも期待です。

あと、ろっぺいちゃんこと六平直政はどこで見かけても可愛い役しかやらないですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました